予測結果の振り返り(3)

時間の経過とともに実効再生産数も当初に比べてかなり変わって来たので、陽性者数と感染経路不明者の割合の7日間の移動平均のグラフを使って、パラメータの時間的変化を見て行きたいと思います。
まず最初の頃の減少傾向のグラフですが、無症状者の割合0.32、実効再生産数0.7で比較的近い結果が得られます。

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実効再生産数0.7でのグラフ

この後、減少傾向がかなり鈍化したグラフは、無症状者の割合0.34、実効再生産数0.8で比較的近い結果が得られます。

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実効再生産数0.8でのグラフ

その後、ほぼフラットになったグラフは、無症状者の割合0.38、実効再生産数0.99(式の都合上1,0は特異点となるため)が比較的近い結果を示します。

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実効再生産数0.99でのグラフ

時間的変化を見ると、感染経路不明者の割合から推定される無症状者の割合が、時間的に増加する結果となっています。しかし感染者のデータを見ると、この期間の感染者の年齢分布に大きな変化は見られないため、無症状者の割合が変化する理由は見当たりません。最初の単純なモデルでは現実をうまく説明できないという結論にならざるを得ません。最初のモデルでは、実行再生産数が増えると、感染経路不明者の割合は小さくなる傾向があります。今回の結果を説明するには感染経路不明者の割合が大きくなる要因を導入する必要があります。
毎日発表されるデータを見ると感染経路が判明している陽性者の中で、家庭内感染した人数に比べて、会食などで感染した人数が小さい結果となっています。家庭内など比較的固定した集団内での感染経路に比べて、会食など動的に変化する集団内の感染経路では追跡できる割合が低い可能性が考えられます。この場合発症した陽性者は感染経路不明者に数えられますが、無症状者は未確認キャリアの集団に入ることになります。次回はこの影響を考慮してモデルを少し修正した計算結果について説明したいと思います。