新型コロナの無症状者の実効再生産数を試しに計算してみた

新型コロナのニュースが連日報道されていて、無症状者が話題になってますが、無症状者と発症者で実効再生産数はかなり違うのではないかと思いました。
誰か既に思いついた人はいると思いますが、試しに計算してみました。

感染経路不明者を50%、全体の実効再生産数を 1.6とした場合に推定される、無症状者と発症者の実効再生産数の値
発症者の実効再生産数: 0.8人
無症状者の実効再生産数: 4.0人

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理論的な話は詳しくないのと、値も厳密に推定できているわけではないので、簡単に以下のようなモデルを使いました。

記号は以下の意味で使います。
p: 無症状者の割合
Ns(k): 第 k世代で検査で捕まった感染者の人数
Na(k): 第 k世代で検査されな無症状者の人数
Nss(k+1): Ns(k)から感染した第 k+1世代の発症者の人数
Nsa(k+1): Ns(k)から感染した第 k+1世代の無症状者の人数
Nas(k+1): Na(k)から感染した第 k+1世代の発症者の人数
Naa(k+1): Na(k)から感染した第 k+1世代の無症状者の人数
Rs: 検査で捕まる感染者 1人が次世代で何人の感染者に伝染すか
Ra: 検査されない無症状者 1人が次世代で何人の感染者に伝染すか
q: 感染者のうち検査で捕まらない割合 Na/(Ns+Na)

第 k世代 (全体の感染者数を 1と置く)
Ns(k) = 1-q
Na(k) = q
第 k+1世代
Nss(k+1) = Ns(k)*Rs*(1-p) = (1-p)*(1-q)*Rs
Nsa(k+1) = Ns(k)*Rs*p = p*(1-q)*Rs
Nas(k+1) = Na(k)*Ra*(1-p) = (1-p)*q*Ra
Naa(k+1) = Na(k)*Ra*p = p*q*Ra

検査では以下の人数が計測されます。
濃厚接触者: Nss(k+1) + Nsa(k+1)
感染経路不明者: Nas(k+1)
検査は完璧で、濃厚接触者と発症した感染者は全て捕まると仮定します。

全体の実効再生産数を 1.6 として Rs、Ra を推定します。
無症状者の割合は p = 40% を仮定します。
https://www.afpbb.com/articles/-/3291491

・感染経路不明者数の割合: 50%
Nss(k+1) + Nsa(k+1) = Nas(k+1)
(1-p)*(1-q)*Rs + p*(1-q)*Rs = (1-p)*q*Ra
(1-q)*Rs = (1-p)*q*Ra --- (1)

・実効再生産数: 1.6
第 k世代の検査で判明した陽性者数: 1-q
第 k+1世代の検査で判明した陽性者数: Nss(k+1)+Nsa(k+1)+Nas(k+1)
Nss(k+1)+Nsa(k+1)+Nas(k+1)
= (1-p)*(1-q)*Rs + p*(1-q)*Rs + (1-p)*q*Ra
= (1-q)*Rs + (1-p)*q*Ra
(1)を使うと
= 2*(1-q)*Rs
第 k+1世代の感染者数が第 k世代の感染者数に増加率をかけたものであることを使い、
2*(1-q)*Rs = 1.6*(1-q)
Rs = 0.8

・第 k+1世代で感染者のうち検査で捕まる人数の比率が 1-q になる(定常状態)
k+1世代の検査で捕まる人数
Ns(k+1) = Nss(k+1) + Nsa(k+1) + Nas(k+1)
= (1-p)*(1-q)*Rs + p*(1-q)*Rs + (1-p)*q*Ra
= (1-q)*Rs + (1-p)*q*Ra
(1)を利用して
Ns(k+1) = 2*(1-q)*Rs
全体の人数は
Ns(k+1)+Na(k+1) = Nss(k+1) + Nsa(k+1) + Nas(k+1) + Naa(k+1)
= (1-p)*(1-q)*Rs + p*(1-q)*Rs + (1-p)*q*Ra + p*q*Ra
= (1-q)*Rs + q*Ra
(1)を利用して
Ns(k+1)+Na(k+1) = (1-q)*Rs + (1-q)/(1-p)*Rs = (2-p)/(1-p)*(1-q)*Rs
比率が 1-qになるため、
2*(1-q)*Rs = (1-q)*(2-p)/(1-p)*(1-q)*Rs
2 = (1-q)*(2-p)/(1-p)
1-q = 2*(1-p)/(2-p) = 1.2 / 1.6 = 0.75
q = 0.25
(1)より
Ra = (1-q)*Rs/(1-p)/q = 0.75*0.8/0.6/0.25 = 4.0


ここで Ra/Rs (無症状者が伝染す人数/感染者が伝染す人数 = 5) について少し考えて見ます。

発症する場合、発症前二日間ほど症状はないけど、人に伝染す期間があると言われています。発症した後は、通常は自己隔離するため、それ以降人に伝染す可能性は下がります。

新型コロナウィルスの場合、唾液による飛沫感染と言われています。さらに唾液PCR 検査では、発症後九日間以上経つと、唾液中のウィルスの量が減少して感度が悪くなると言われています。もし無症状の場合も移す仕組みが発症者と同じで
症状が出ていないだけとすると、2+9日の間、人に伝染する期間があることになります。

この比率はだいたい 5 程度であり、計算で出た値とほぼ符合するので、無症状者の実効再生産数が高い理由は、無症状者が社会に滞留しやすいからと思われます。

発症の二日前から伝染する可能性があるため、発表される一日の感染者数の 2 倍程度の(将来の)発症者が世の中にいて、他に無症状者が 5/3 倍いる計算になります (合計すると発表される数の 16/3倍)。